2024年診療報酬改定の行方「上がるのか、下がるのか?」厚労省・財務省・医師会・経団連・労働組合・保険団体それぞれの主張

6年に1度の『トリプル改定』2024年診療報酬改定

2024年の診療報酬改定は、『医療・介護・障害福祉サービス』の改定時期が重なったトリプル改定となる。現在日本が抱えている「医師の過重労働、医療・介護ニーズの増加(団塊世代の高齢化)、物価・人件費の上昇」などを踏まえて診療報酬は改定されるが、はたしてその行方はどうなるのか。

診療報酬上がる?下がる?

財務省の財政制度等審議会は2023年11月20日に、鈴木財務大臣に来年度予算編成等に関する建議を提出し、その中で、「診療所の診療報酬を5.5%引き下げる」べきだと提言。対して、厚生労働省は物価高騰・賃金上昇への対応として、診療報酬の改定に対して上げるべきとの見方を示している。「上げるべき」「下げるべき」、それぞれ主張者とその論拠をまとめてみよう。

診療報酬は上げるべき(プラス改定)』

  • 日本医師会 松本会長「マイナス改定は言語道断で、従来のような改定では、医療従事者のさらなる流出を招き、医療そのものが崩壊する」
    ⇒ 医療・介護の従事者の待遇改善(賃金上げ)を図ることで、医療人材の流失を防ぎまた日本経済全体の活性化に繋がると主張。
  • 全日病副会長 神野正博委員「人件費を3%上げるためには6,100億円必要で、そのために診療報酬改定で2.19%の引上げが必要である」
    ⇒ 日本全体の賃金上昇の背景を受け、それを実現するために診療報酬をプラス改定し、医療現場の人材確保を訴える主張である。日本は今後2025年から2040年にかけて、ベビーブーマー世代が65歳以上となる高齢化社会が進み、より医療・介護サービスのニーズが高まる。そのなかで人材の流出はかなりの痛手であり、医療DXの推進を行う上でも若い人材の獲得・抱え込みは重要である。
  • 東京都医師会会長 尾﨑治夫氏「医療従事者の賃上げのために、今回は報酬アップが必須」
    ⇒ 日本医師会は報酬改定のたびにその引き上げを政府にこれまでも要求しており今回も同様だ。しかし尾崎氏は今後の高齢化社会に向けて、何でもかんでも保険でみることには懐疑的であり湿布薬や保湿剤を保険適用外にする見方を示している。(2023年11月30日東京新聞インタビューにて)
  • 日本医療労働組合連合会 森田進書記長「診療報酬の改定がないとケア労働者の待遇改善や人員を増やすこともできない」
    ⇒ 日本医労連は2023年12月1日、看護師などのこの冬のボーナスについて労働組合が調査した結果、3割以上の組合で去年より引き下げられたことを発表。それを受け、今後の待遇改善のために診療報酬のプラス改定を訴えかけた。

『診療報酬は下げるべき(マイナス改定)』

  • 健康保険組合連合会 松本真人理事「大胆な配分の見直しなど、真に有効でメリハリの効いた改定が不可欠だ」
    ⇒ 来年度の診療報酬改定に向けて、健保連は厚生労働省に要望書を提出し、「保険料などの国民負担は限界に近く、診療報酬を引き上げる環境にはなく、診療所の経営が「極めて良好」として、診療所の報酬単価を「5.5%程度引き下げるべき」と主張。その一方で、医療従事者の処遇改善が必要であると考えており、病院と比べ経営が良好な診療所の報酬を見直したり、医療機関内での賃金の配分を変更するなどして、その財源の確保の必要性を訴えている。
  • 財政制度等審議会 増田寛也分科会長代理「必要な水準以上に診療報酬を維持すれば、その分、保険料は引き上がることになる」
    ⇒来年度予算案の編成に向けた提言にあたる「建議」の中で、診療報酬の改定について、現役世代の保険料負担を軽減するため、医療従事者の人件費などにあたる部分を引き下げることを主張。高い利益率である診療所の診療報酬を見直すことで保険料の負担および医療従事者の賃上げ財源を確保できると主張。

果たしてどうなる?

『医師の働き方改革』や『医療DXの推進』といった事案も目白押しな2024年。マイナ保険証の対応で苦労した医療機関が多かった中、財務省からの『2024年診療報酬5.5%減』は、新規開業(特に設備投資金額が大きい科の場合)をより高いハードルにさせるものかもしれない。都市部は既に競合が多い科も多く、集患&固定費の削減はより一層の経営努力が必要になるだろう。

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